クマムシ党の『寛容な社会で幸福に』
(ピッ ピッ ピッ)
(ポーーーーーーーーーーーン)
ここからは政見放送をお送りします。この時間は、クマムシ党の政見放送です。
クマムシ党総裁・クマムシさんさん。クマムシ。120歳。ツイッターなどのソーシャルネットワーキングサービス上で活動。党のスローガンは「ストレスに耐えるコツ、それは鈍感になること」。それでは、クマムシさんさんの政見放送です。
みなさん、こんばんは。クマムシ党総裁のクマムシさんです。
今回、クマムシ党の主張をこうしてみなさんにお届けできる機会をいただき、たいへん嬉しく思います。住みやすい国をつくるには、どうしたらよいのか。今日は、これについて我が党から提案させてもらいます。
まず最初に。日本は本当によい国です。色んな国を見てきて、本当にそう思います。これだけの人口を抱えながら、国民のモラルは高いし、大きないざこざも少ない。高い秩序が保たれている。あと食べものが美味しい。寿司とか酢豚とかパスタとか。
日本はよい国です。ただし。国民ひとりひとりが感じている幸福度は、それほど高くないようです。それはなぜか。ずばり、日本人はお互いに「ゆるす」ことをしないからです。寛容さに欠けている、と。
電車の中でいびきをかく乗客、冷蔵庫に入るアルバイター、キラキラ女子ブロガー。多くの人が、彼ら彼女らの存在をゆるせない。寛容さが欠けているからなんです。
他人への不寛容さは、廻り廻って自分にも向けられます。そして、全体として不寛容な社会ができてしまう。実際に、今の日本社会がそのような状況です。
何に対しても過剰なサービスを求めるあまり、ちょっとしたミスも許されない。サービス向上のインフレが起こり、エンドレスな消耗戦が続く。クレーマーへの対応に無駄なリソースが割かれる。ブラック労働環境を作り出した一因が、ここにあります。
日本に特有の不寛容な社会が、国民の幸福度を低下させているのです。だから、一人一人がもっと寛容になればいい。それが、みんながより幸福になるために必要なんです。
手前味噌で恐縮ですが、私たちクマムシの話をさせてください。クマムシはものすごい環境ストレスに耐性があります。乾燥、超低温、真空、高圧、高線量放射線、などなど。私たちは、鈍感になって悪環境をやりすごすのです。
クマムシにはエクセレントな「耐性」能力がある。実は、「耐性」は英語で「トレランス(Tolerance)」といいます。そして、「トレランス」には「耐性」の他に「寛容さ」という意味もある。そう、クマムシはすごく「寛容」な生き物だったんです。
クマムシは「寛容」だから、何億年も滅ばずに生き残ってきました。絶滅していった生物たちを横目に。ストレスに対していちいち無駄なエネルギーを費やすのではなく、「寛容」になってあらゆる環境を受け入れて生きてきたのです。
「寛容」な人は幸福度が増し、「寛容」な社会は存続していきます。「寛容」なクマムシが幸せに生き続けてきたように。
クマムシ党は「寛容な国をつくる」ことをマニフェストに掲げます。二次元にしか興味のないトゲのある孤高系女子や、相手の理解力はおかまいなしに難解な論理をまくしたてる博士男子にも、皆で手を取りあって寛容になれる社会。そんな国をつくります。
みなさまにおかれましては比例代表に「クマムシ党」、候補者名に「クマムシさん」とご記名いただければ幸いに存じます。清き一票をお願い申し上げて、この演説を終えたいと思います。
ご静聴、どうもありがとうございました!
クマムシ党総裁・クマムシさんさんによる政見放送をお送りしました。
☆昨年の政見放送はこちら☆
クマムシ党の政見放送2013